おやつく後記

日常のことなど思いつき

久々帰国の兄と晩ごはん

海外在住の兄が出張で帰ってきた。

 

 

一日休みを利用して買い物に行くというので何を買うのかと思いきや、日本のお菓子だって。現地では日本のお菓子がなく、あったとしても高いので、帰国ついでにボストンバッグいっぱいのお菓子を買うらしい。

 

 

 

 

先にネットで買ってうちに届くようにしてくれたら、わざわざ買い物にでなくてもいいんじゃない? というと、「ネットは高いからダメ」なのだと。地元スーパーかドンキに行くらしい。わたしの1万倍くらいお金持ちのくせに、ハートは庶民の兄。学生の頃に朝イチでスーパーの特売チラシを見ていたころから変わらない(買い物に行くわけでもないのに)。まあ、使うところでは使うが、倹約するところはとことん倹約するってのは、良いことではある。

 

 

久々の帰国なので、「家族でどこか食べに行く?」と誘われたが、うちで食べようよ、と断った。下手な店よりわたしの料理の方がおいしい自信があるし、外に出ると疲れるので、好きなお酒を買って家でくつろぐ方がいい。

 

 

お酒に合うものを、と考えたメニューは、えびしゅうまい、アンチョビのポテサラ、焼きナス、アボガドのタルタルサラダ、レタスとカリカリじゃこのさっぱりサラダ。エビシウマイには干し貝柱と殻付きエビを使って贅沢に、焼きナスはいましがた庭で収穫したものを使用。

 

 

 

 

兄はあっという間に平らげ、わたしも母もほぼ手を付けるヒマがなかったおかずもあったほど。ちょっとは残しとけよなと思いつつ、作り手として悪い気はしなかった。

 

 

兄が来る前にはスイートポテトをチョコでコーティングしたお菓子も作っていたら、それもちょこちょこつまんでいた。翌日には兄家族のプレゼントにクッキー2種類も焼いた。

 

 

 

 

兄が発つ日の昼食はチャーハン。具はベーコンと長ネギ、ニンジンに卵。味付けは、鳥ガラスープの素、オイスターソース、塩コショウ、隠し味は少量のナンプラーと醤油で。チャーハンは学生時代にはまったのを機に得意になった料理のひとつで、超高温で一気に仕上げるのがコツ。

 

 

今回はいつになく上手にできて我ながら感動した。新米を使ったおかげか、謎の甘味もあっておいしく、兄も「どうやって味付けしたの?」とおかわりするくらい満足してくれた。

 

 

おしゃべりな兄は、帰ってくるたび、現地の生活について自慢なんだかよく分からない話をしてくる。その中で会社の福利厚生にふくまれている軽食やランチの話がある。社内にあるカフェテリアには専任のスタッフがいたり、軽食もランチも内容がびっくりするくらい充実しているとか、とにかく贅沢なことは伝わってくる。

 

確かに、自分の会社勤めをしていたころを思い出すと、うらやましいなと思うところはあるが、いまの生活をしていると、「そういう世界もあるのねえ。すごいねー」くらいにしか思わない。だって、うちの食生活の方がずっと豊かだもの。

 

 

兄がボストンバッグいっぱいに買ったメーカーのお菓子も、うちでは全く買わない。なぜならわたしが作るから。人からもらえばたまに食べるけど、気づいたら「これに似たの作れるかな」と考えている。生菓子はたまにしか作らないので、母が買ってくるけども。

 

 

わたしよりずっと優雅な生活をしている兄より、少なくとも食べているものはわたしの方が自由で豊かだった。ここでは詳しく書かないけれど、見ている景色も時間の過ごし方も、それほど羨ましいわけでもなく、今のわたしの環境は悪くないと思った(改善の余地は大いにあるけど)。兄のような生活は未経験なので、できるものなら体験する価値はあるが、すぐに飽きるだろう。

 

 

もちろん、それはわたしがそう感じるのであって、兄は自分の生活に満足している。家族を養い世界を飛び回るサラリーマンでもある兄と、フラフラしているわたしとは全く考え方も違う。いくら食生活が豊かでも、兄はわたしのことなどみじんもうらやましくないだろう。

 

 

もし、わたしが夫についていって海外に住む妻なら、どうするだろう?

 

 

きっと、もっとマニアックな場所に行きたいし現地の友達を作りたい。そして文化や料理を知りたいし、自分でも試したい。そして日本の文化や食事も試してもらって感想を聞きたい。現地料理とわたしの知恵を融合させた新しいレシピを開発するに違いない。そうだ、お菓子の作り方も教えてもらわねば。そしたら絶対楽しいだろうな!

 

 

結局、今の場所にいようが、お金持ちになろうが変わらない。そういうもんだろうな。

 

 

兄はお菓子がパンパンに入ったボストンバッグを「めちゃくちゃ重い! これは大変だわ」とボヤきながらも、どこかうれしそうだった。お菓子と対面して喜ぶ姿でも想像しているのだろう。その隙間にわたしの手作りクッキーも詰めて「じゃ、いくわ!」と元気よく旅立っていった。

台風一過。