昨日、夜道を歩いていて思ったことを、寝る前にメモした。なんとなく気分が落ち込んでいたけれど、どん底でもないような自分の心と散歩道の風景。
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システマティックな人生のレールから外れて随分たった。最初はいきり立っていたけれど、いざ放り出されるとたくましく生きる勇気がなく、
次第に元気もなくなった。お愛想とウソ、体裁、”何はなくとも金”の人と距離を置いたら、孤独を感じる時間が増えた。
寂しくないといえばウソになるけど、愛想笑いをすると顔がひきつる。本音を飲み込む度に自分が小さく死んでいく。心と身体が固くなり、肉体を持ったロボットか、人間のふりをしたゾンビに近づく。そうなるくらいなら、寂しい方がマシ。
システムが作り上げた街をぼんやりと歩いた。タイルが敷き詰められた道沿いにビルが立ち並ぶ。大通りでたくさんの人々が働いているはずなのに、有機的な香りもあるはずなのに、どこか無機質。
視線を移すと、手入れされていない植え込みの木々がぼうぼうと気ままに伸びている。きっと完成した当初はピカピカに整備され、木々たちも小ぢんまりと上品に整えられていたはずだ。それが長らく放置され、最低限の剪定しかされていない。
歩道のタイルや電柱のわずかな隙間から、何本もの猫じゃらしが揺れている。細い並木道の根元を見ると、土が盛り上がり周辺のブロックをちから強く押し上げている。
古びたシステムの隙間から、誰も気に止めようとしない雑草が生え、忘れ去られた木は当初と変わらず生命力を発揮していた。
見上げると上弦の月が南の空に輝いていた。人間という存在が短期間で作り上げた世界を、そうなるずっと以前から見つめ続けている存在。ぎゅうぎゅう詰めの地上とは違って、隣の星との距離は何億後年。有り余る空間で余裕の表情をしている。
システムなど関係なく、朝は眠り、夜を照らす。月はこんな世界を見て何を感じるのだろう。システムを拒否して虚勢を張っているわたしは、どう映るだろう。
バカだねと嘲笑ってるのか。かわいいねと愛でているのか。どうでもいいわと後ろを向いているのか。
夜に舞う鳥が、システムのはるか上を優雅に抜けていった。
わたしもシステムの合間をぬって舞う鳥になりたい。上から叩きつけられても逞しく伸びる雑草になりたい。どんな状況になろうとも、わたしには関係ないわと涼しい顔で日々を生きる月になりたい。